クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 「世界を壊して、私は生きる」

「マナ」と呼ばれる画期的な情報技術の発展により、戦争や環境などの諸問題がなくなり、世界に安寧の日々が訪れた。

しかし、それはマナの恩恵を得られる人間のみにとって都合の良い偽りの平穏であり、マナをあつかえない者たちは「ノーマ」という蔑称で反社会的人物として虐げられ、「ノーマ管理法」と呼ばれる法律に基づき、社会から隔離されるという非人道的なあつかいを受けていた。それは生まれたばかりの赤子ですらも例外として認められず、マナをあつかえる者たちはそのことに何の疑問も抱かず、むしろ当然のように考えていた。

大国「ミスルギ皇国」の第一皇女で、民衆から絶大な支持を受け何不自由の無い人生を約束されていたアンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギもまた、ノーマ根絶を理想とする歪んだ思想に染まっていた人間の1人であったが、16歳を迎えて洗礼の儀が執り行われた際、兄・ジュリオによって自身がそれまで人間と認めようとしなかったノーマである事実を暴露される。まったく知らなかった事実を受け入れられず、困惑するアンジュリーゼに対し、皇国の人々はあっけなく掌を返す形で彼女を憎むべき敵としてあつかい、その混乱の最中でアンジュリーゼを兵士の銃弾から庇った母・ソフィアは命を落とし、父・ジュライは皇帝の座を簒奪される。